追悼上映 大谷淳 フィルム作品

「追悼上映 大谷淳フィルム作品」
12月2日(土)18:30~ 

 大谷 淳氏がもう数年前に亡くなっていた、と聞いたのは、今年4月のことだった。たまたま会った、そのとき初めて話をした人が、私と大谷氏の確執も知らないのに急に教えてくれ、「え?」と固まった。

 私が大谷淳作品を初めて観たのは、2000年にシネマ・ヴァリエテ主催で、浜松にて大谷氏の7本の作品がフィルム上映されたときだった。
 そのとき、その世界観に、作者が世界や世間に対して抱いているであろう絶望の深さに驚いた。彼がカメラを持って写す対象は、もっぱら床や道路の水たまり、壁といった鉱物的なものである。しかしそれらを手持ちカメラで凝視した映像には、なまめかしささえ感じられた。床や道路、といったものに真剣なエロスで対峙しているのだ。まさに倒錯!と、歪んだ性的嗜好性が感じられる映像に、興奮していた。

 その後、2007年に私主催の上映イベント『変態まつり』に大谷氏に参加してもらったときに事件が起こり、私と大谷氏は揉めに揉めた。残っている文書を読むと、お互いどうしようもない勢いで罵り合っており、周りの方々はさぞ辟易としたことだろう、と自虐的に笑える程だ。
 しかし、私はそのときもその後も、「お互いが自己中心的過ぎるためのぶつかり合いなんだから、そのうちに笑いながら話せるようになる」と呑気に考えていたのだ、と今、思う。

 今回、ご遺族のご厚意により、大谷氏の作品フィルムをお借りして上映を行える運びとなった。しかし、19本あるはずの完成作品のうち、フィルムがご自宅で見つかったのがわずか2本で、やむを得ずデジタル版が手に入る作品2本と(デジタル上映)、そして黒坂圭太監督作品で大谷氏が出演している16mm作品2本とを、プログラミングした(大谷氏が出演していることで選んだ作品ではあるが、言わずと知れた、自主映画史上に輝く傑作である)。

 大谷氏の作品は、次にいつ上映ができるか、できないのかわからない。過去に既に作品を観ている親交があった方々にも、そして大谷氏の作品を知らない若い方々にも、是非多くの人に観ていただきたいと切に願い、この上映を企画したものである。(小口)

Aプロ 12/2(土)18:30~
「NOTHING」(8mm、8分、1979-1980年) ※デジタル上映
「FLOORLIGHT」(8mm、15分、1984-1987年、サイレント) ※デジタル上映
「白い部屋1」(16mm、13分、2001年、サイレント) ※遺作
「個人都市」(監督/黒坂圭太、出演/吉本陽一・大谷淳、16mm、25分、1990年)

Bプロ 12/2(土)19:50~
「床にズームすること」(16mm、20分、1992年、サイレント)
「箱の時代」(監督/黒坂圭太、出演/大谷淳、16mm、30分、1992年)

料金:各プログラム 予約1100円、当日1200円(共に、1ドリンク付き)
※上映後に、追悼の飲み会を行います。その場で、色々な方と色々なお話ができたらと思っております。

参加費:1000円(1ドリンクと、軽いおつまみ付き)
予約・問い合わせ:E-mail tobiuo@asahinet.jp
Tel 03-6454-7745

協力:ミストラル・ジャパン、ヴォワイアンシネマテーク、福岡市総合図書館、芹沢洋一郎(敬称略)